株式会社Trys 採用育成グループ 市川麻菜美氏が語る「 唯一のコンテンツを生み出し、勝てるチームを作るための組織形成」

 

『エンタメ人』がお届けする、エンタメ業界のHRパーソンへのインタビュー連載。
エンタメ業界へ転職を考えている方たちへ向けて、人材開発や組織開発、働き方改革の工夫などを探っていく。第2回は、オリジナルのゲーム開発からキャラクターやイラストの受託事業を展開し、広範囲かつハイクオリティなコンテンツを世の中に送り出している企業を取り上げる。(編集部)

プロフィール

市川 麻菜美 (イチカワ マナミ)

株式会社Trys 採用育成グループ

都立小平高校を卒業後、西武レクリエーション株式会社入社。西武ドーム営業課に配属され、野球興行に携わる。その後、リース会社や保険会社などの金融業界で営業事務を担当し、2017年、Exys株式会社(現Trys)に入社。
YouTube動画事業などの新規事業立ち上げの際は年間60名以上の採用を担当。現在は中途、新卒採用部門のマネージャーに就任。育成や広報業務にも力をいれている。

幅広い事業を支える、質の高いクリエイターのスキル

―貴社の事業内容について教えてください。

現在、弊社には2つの事業部があります。
1つはゲーム事業で、自社運営のゲームはもちろん、他のゲーム会社さまとの共同開発やリニューアルのサポートなど、幅広い形でゲーム制作に携わっています。

もう1つがクリエイティブの受託制作事業です。
スマートフォンアプリのゲームを中心に、ゲーム内で使用するイラストを受託制作しています。最近では、大手鉄道会社様や地方自治体様からキャラクターやオリジナルデザインの依頼を受託した実績もありますね。

―受託制作事業が伸びている理由はどのような部分にあるとお考えでしょうか。

受託制作事業が伸びている理由は、案件1つ1つに真摯に取り組む姿と
成果物のクオリティに対し、信頼感を持っていただいているためだと思っています。

弊社の金額設定は安価ではありませんが、管理コストや仕上げのコスト、また成果の部分まで考えると、非常にハイクオリティなパッケージで受託していると思います。

また、受託制作事業は営業が専任でいることも選ばれている理由の1つだと思います。
皆、営業未経験・ゲーム業界未経験ですが、コミュニケーション能力のあるメンバーが
揃っているので、お客さまのニーズをしっかりとヒアリングし、上手に社内に落とし込んでいて、双方が喜べる環境をつくることに長けています。

実際に弊社のクライアント様からは「Trysに任せれば間違いない」という言葉を言っていただけることが非常に多いですね。

特に最近では、韓国発祥のWebtoonと呼ばれる縦読み形式の漫画案件が増えており、ゲーム案件よりも増えていきそうな勢いです。

―ゲーム事業の枠を超え、キャラクターやWebtoonの分野においても名前が広がっているのですね。

そうですね。ただ、以前から弊社としてはゲームに限定せず、様々な分野において事業を展開していければと考えていました。

もちろんゲームが好きなメンバーが多いですし、ゲームの分野で良い作品を作ることを目指していますが、弊社はクリエイターのスキルを提供する会社であると考えています。
そのため、提供できるものはゲームのシナリオでも構いませんし、システムやイラストでも構いません。コンテンツを媒介に、クリエイターのスキルが商品となっています。

―今注力されている事業はございますか。

やはり、先ほども触れたWebtoon制作事業に注力していきたいです。
日々多くの企業さまからご相談いただいている状況で、私たちの予想をはるかに超えて世の中の需要が急速に高まっている印象を受けています。この波には乗っていかなければいけないと思っています。

―今後どのような事業を発展させていきたいとお考えでしょうか。

ゲーム事業においても積極的に新規開発や受託制作を行いたいと考えております。
なぜなら、事業におけるメリットが数多くあると考えているからです。

例えば、弊社でオリジナルのキャラクターやゲームを生み出すことができれば、もちろん利益につながりますが、それだけではなく、オリジナルコンテンツが面白くお客さまに喜んでいただけるものであれば、それを生み出しているクリエイター側も絶対に楽しいと思います。
クリエイターたちがワクワクしながら新しいものを積極的に作っていける、そんな熱量の高い会社にしていけば、売り上げは自然についてくると考えていますね。

親会社のSunAsterisk(以下Sun*)の代表も「Trysは面白いコンテンツを届けることに注力し、Sun*はその舞台をアップデートしていく。それが自分たちのシナジーなのではないか」というメッセージをいただき、とても印象に残っています。
全社を通して既存のタイトル・既存の分野以外にも積極的にチャレンジし続けていきたいと思っています。

現場に向き合い続け、アップデートを怠らない人事の仕事

ー入社された経緯をお聞かせください。

前職は保険会社の営業事務、前々職はリース会社での事務と、金融系の事務に携わっていましたが、金融業界はセキュリティーが非常に高く、ミスの許されないマニュアル文化の正解の中で、仕事をこなしていくというものでした。

勉強になったことも多かったのですが、もう少し自分で考え、チャレンジしていきたいという思いがずっとありました。

接客業でのアルバイト経験もありましたので、金融業界で培った事務スキルと、接客業で培った対人スキルを活かせる仕事はないものかと、転職エージェントに相談したところ、人事や採用の仕事が合っているのではとご提案いただきました。

初めて採用という仕事を意識した時に、未経験でもチャレンジできた弊社にご縁があり、入社することになりました。

―現在のお仕事内容について教えてください。

メインの業務は採用で、中途・新卒どちらも担当しています。

その他、社内のコミュニケーション活性や自社の企業理念などを社員に浸透させる施策の企画・実行、またプレスリリースがあった際の窓口も担当しています。

―現在のお仕事をする上で、意識されていることはありますか。

コミュニケーションの部分は意識していますね。
現場での仕事内容や弊社が扱う商材の特徴、現場で求められるスキルなど、なるべく細かいところまで把握できるように、様々な立場のメンバーから話を聞くようにしています。

また、社員からの相談事も、いつでも言ってもらえるような状態をつくるように心がけています。入社時のオリエンテーションを私が担当していて、全員と顔を合わせていることもあり、何かあるとまず私に相談してくれることも多いですね。メンバーそれぞれの仕事内容や1日のスケジュールも把握することで、なぜ悩んでいるのかをより早く理解し、解決できるようにしています。

―各メンバーの仕事内容や働き方を理解した上で向き合われているということですね! 

そうですね、受容力が大切だと思いますので、向き合う際にはとにかく話を聞くようにしています。

採用に関しても、「現場が何に困っていて、どういう人材が欲しいのか」ということをきちんと理解できていないと、人材紹介会社との意思伝達もうまくいきませんし、入社後のミスマッチにも繋がってしまいます。
現場とバックオフィスの間でも、お互い歩み寄ることは意識しています。

―素晴らしいですね!他に人事として求められるスキルはどのようなものがありますか。

マルチタスクの能力は必要ですね。
選考の進捗、現場からの確認事項、社員トラブルなどが同時に発生するため、優先順位を瞬時に付け、各面に対応しなければなりません。そういった能力が非常に重要なのではないでしょうか。

また、人を頼れる力も必要です。
例えば、給与については労務の人に確認しなければ、細かい給与の計算方法が分からないこともありますし、制度の設計においても総務や法務の人とやり取りすることが多いです。

採用業務についても私が担当だからといって全て1人で行っていては、現場の良さが伝わりづらいと思っています。
なので、現場のマネジャーに説明会に参加してもらったり、人材紹介会社を訪問する際に同行してもらっていますが、より深い話が聞けると人材紹介会社の方からは喜ばれますね。

人を頼れるというのは、人事としては非常に大事なスキルだと個人的には思っています。

―どのような瞬間に仕事の醍醐味を感じますか

私が採用したり、育成に関わった人材が活躍してくれた時、人事としての醍醐味をしみじみと感じますね。

例えば、社内の育成プロジェクトを通じて成長した方が、有名タイトルのメインキャラクターのイラストを担当することになったと、先日全社会議で発表がありました。これを聞いた時はすごく嬉しかったです。

また、実際に私が専門学校を訪問し、スカウトして入社につながった企画職の新卒入社の方が、1つの案件のディレクターをお任せするというレベルまで成長してくれています。入社してくれた人が活躍している瞬間は、あの日あの時の出会いがなければと思うので、たまらなく嬉しいですね。

アウトプットへの真摯な姿勢が会社を唯一無二の存在に

ーどのような方を採用したいと思われているのでしょうか。

自分で考え、能動的に動くことができる人ですね。
弊社にはまだビッグコンテンツがありません。そのため、今のWebtoonがまさにそうですが、トレンドの波に乗り、その時々で自分たちが勝てるものを次々に選択していくことになります。その波にうまく乗って自分のものにしていける人は弊社に合うと思います。
どの部署、どのポジションであっても、その力は必要ですね。

そのため、業界のトレンドに敏感な方も重要だと思っています。
「〇〇をやりたい」「〇〇が描きたい」「このゲームを作りたい」よりも、業界の今のトレンドや流れと自分のスキルを踏まえて「自分の〇〇なところを伸ばしていくと、今後業界ではこんな活躍ができるのではないか」というふうに、俯瞰してロジカルに見ることができる方に魅力を感じますね。
トレンドを捉えるだけではなく、そのトレンドをどのように活用すれば良いか考えられる人ですね。

―変化の多い業界でしっかりとトレンドを追うのは大変そうですね…!

そうですね、しかも広範囲にアンテナを張っているメンバーが多いので本当にすごいと思います。

例えばゲームのキャラクター制作担当でも、ゲームのトレンドを追っているだけでなく、ファッションのトレンドまで追っているんです。パリコレで採用された衣装のテイストを、西洋ファンタジーのキャラクターデザインに取り入れたりしているんですよ。

―トレンドやアイデアをキャッチアップするために会社として工夫されていることはありますか。

月に1回、全社会議を実施しています。全社会議は、今自分たちがやっている取り組みや、成功事例、トレンドなどを発表して共有し合う場になっていて、良い刺激になっているかと思います。
また、メンバー1人1人も他企業の動きにアンテナを張り、日々意識的にトレンドを追うことで、自己研鑽していますね。

人事としても情報共有の場を設ける取り組みは行っていて、今年、部活制度を立ち上げる予定です。せっかく様々な趣味や好きなことを持っている方がいるので、より多くの情報やトレンドが自然に入ってくる環境を作っていきたいです。

―元々幅広い分野でエンタメが好きな方が多いのでしょうか。

やはりゲームが好きな方が一番多いですが、小説・漫画を読むことや舞台を見ることが好きという方もいるので、エンタメが好きで自然とアンテナを張っている方は多いです。

例えば、エンジニアの方がデザイナーのツールを自主的に勉強しているなど、能動的に自己研鑽されています。本当に真面目で、シンプルにものづくりが好きなメンバーが多いですね。

―今いるメンバーの方は、ゲーム業界以外のバックグラウンドを持つ方が多いのでしょうか。

管理部門のメンバーは私と同じく、今とはまったく異なる仕事に従事していた方がほとんどですが、皆同様に、裁量があるところで働きたいという理由で入社しています。ただ、変化の多い業界ではあるので、元々ベンチャー企業にいた方が多い傾向はありますね。

またイラストの受託制作事業は短納期で膨大な量を描くという業務内容なので、スピードとクオリティーのバランスを取ることができるアニメ制作業界の方がマッチしています。クリエイティブな業界であっても、やはりビジネスの感覚が必要ですね。 

また、創業者が、固定概念にとらわれることなく新しいアイデアを出すことを大切にしているので、業界未経験者や新卒でも関係なく採用する傾向が強いです。

―新しいアイデアを生み出す環境をつくる上で、会社として意識されていることはありますか。

弊社では、実務をこなしていった先にしか見えないものがあると捉えていますし、自主的なチャレンジが大切だと考えています。デザインのコンペ案件などがあれば、全社に通知しています。積極的に参加する人はみるみる上達しますし、世の中に認知されるスピードも速いです。

―最後に、市川さまが今の会社で達成したい目標についてお聞かせいただけますか。

社長からは「勝てるチームにしていきたい」というメッセージをいただいているので、個人としてはそれを達成したいと思っています。

これまで私たちは真面目に取り組み、業界からの信頼を得てまいりました。しかし、「Trysといえばこれだよね」という圧倒的なものがまだありません。また、全ての社員がワクワクしながらものづくりができているかというと、まだその段階には至っていないと思っています。

勝てるチームがあるから圧倒的なコンテンツを作れるのか、圧倒的なコンテンツがあるから勝てるチームがあるのか、私にはまだ分かりません。とにかく今はやってみよう!の時だと思っています。

勝ちを目指していけるチームづくりのために、全社会議を毎月開催していますし、部活制度の設立・懇親会制度の予算化に向けても動き始めています。「社内環境改善委員会」も、社員の声にできるだけ耳を傾けようと今年1月に作りました。
私がハブとなり、勝てるチームを絶対につくろうと思っています。