AnyMind Japan株式会社・山田 果歩氏が語る インフルエンサーマーケティング市場の未来

 

『エンタメ人☆彡』がお届けする、エンタメ業界のトッププロデューサー/経営者へのインタビュー連載。エンタメ業界へ転職を考えている方へ向けて、若手時代の苦労話から現在の業界動向まで伺っていく。第18回は、インフルエンサーマーケティングを行う会社を取り上げる。(編集部)

山田 果歩(やまだ・かほ)
AnyMind Japan執行役員 兼 インフルエンサーマーケティング事業部 部長
新卒で株式会社マイクロアドへ入社。その後、タイ・バンコクにおいてAdAsia Holdings(現AnyMind Group)に入社。バンコクオフィスにてデジタルマーケティング、インフルエンサー事業などでのセールスの責任者を歴任。2019年、日本オフィスへ異動し、インフルエンサーマーケティング事業部立ち上げを行い、現在も事業部長を勤める傍ら、2021年1月からはAnyMind Japanの執行役員に就任。

グローバルに展開するAnyMind Group

── 御社の事業内容について教えてください。

2016年に創業しており、当時はメディアや広告主に向けたデジタルマーケティングが主事業でした。

その後はさらに事業を多角化させており、インフルエンサーマーケティング、DOOH(Digital Out of Home=デジタル屋外広告)領域への参入、クリエイターのSNS上での活動支援など、さまざまな分野でテクノロジーを活用したプラットフォーム(システムやサービスの土台や基盤となる環境)の開発やサービスの提供を行なっています。

また直近では、D2C(Direct to Consumer=製造者が消費者に対して直接商品を販売するビジネスモデル)の領域で、ブランドを作りたいクリエイター・インフルエンサーや企業の支援事業なども行っており、現在はアパレルやコスメなどのものづくりの領域やeコマースの立ち上げ・運用、物流の分野に関してもテクノロジーを通じたプラットフォームをグローバルで提供しています。

創業5年で、社員は800人以上、13か国・17拠点まで拡大し、8つのプラットフォームを軸に2020年は110億円強の売上規模まで成長しています(2021年4月現在)。

── 新しい拠点をどこに作るのかという判断は、どのようにされていますか。

創業時から変わらず、人口や市場として成長率の高い国や地域を中心として、チャンスがありそうな場所にいち早く展開しています。

── インフルエンサーマーケティング事業部の業務内容について教えてください。

弊社独自開発のアジア最大級のインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「AnyTag」を軸としたデータドリブンなインフルエンサーマーケティングソリューション提供を行っています。代理店や広告主様向けに、煩雑で効果測定が困難といわれるインフルエンサーマーケティングの課題を、「AnyTag」上に蓄積されたデータを活用して、効果を可視化し効率的に実施するお手伝いを前身である「CastingAsia」のころから行っています。

──「CastingAsia」と「AnyTag」の違いとは何でしょうか。

中身は一緒で、社名を「AnyMind Japan」に変えた際に、「Anyブランド」としてプラットフォーム名を統一するために変更しました。日本で「CastingAsia」の名前が知られるようになったタイミングだったので心配しましたが、少しずつ認知されてきました。

── そして、インフルエンサーマーケティング事業部が立ち上がったのが今から2年前ということでしょうか。

インフルエンサーマーケティング事業部自体は、2017年にタイで立ち上がったのが始まりで、その後2019年7月に日本で本格的に立ち上げました。

── インフルエンサーマーケティングは競合も多かったと思いますが。

とても多かったですね。ですが、「AnyTag」に様々な機能があることが競合優位性になりました。例えば、インフルエンサーをネットワーク化し、過去投稿の実績値、例えば平均のいいね数・コメント数などをリスト化しているプラットフォームや、SNSアカウントの解析ツールや投稿管理のプラットフォームを開発している会社は複数あります。AnyTagはそれらの基本的な機能が全て揃っていることに加え、Google AdsやFacebook Ads同様にインフルエンサー投稿の結果がリアルタイムで反映され、一元管理されるレポート機能が他にない機能だと思います。

日本の市場を見ると、このような機能が統合されている会社はあまりなく、ここに差別化できる部分を見出したと言えます。プラットフォームとしての認知はまだまだこれからというフェーズですが、少しずつ業界認知も上がってきており、価値貢献はできてきているかな、と。

また、良いタイミングでGROVEと一緒になれた(2020年1月、SNSマーケティングやクリエイター育成のノウハウや機能を持つGROVE株式会社を子会社化)ことは、良かったと思います。

所属クリエイターがいるのといないのとでは、代理店やクライアントの反応も変わってきますし、提供できる価値も大きく変わってくるので、そこも事業がブーストする1つのきっかけだったと思います。日本のマーケットではインフルエンサーマーケティング事業部としての本格参入は後発でしたが、立ち上げから1年半ほど経って、現在では外資の日用品メーカーや大手化粧品会社・省庁系の案件など幅広くお付き合いいただき、好評をいただけるまでになりました。

── インフルエンサーマーケティングの市場における課題や、それをどのように解決していきたいかについて教えてください。

現状、それぞれのSNSプラットフォームの情報やデータが分断されているのが課題だと思います。

例えば、エンゲージメントについてもプラットフォームごとに指標が異なるので、統一して、費用対効果をしっかり数値化できる会社はなかなかありません。案件をやった前後で消費者の声がどのくらい広がったのかをプラットフォーム横断で見るためには、ソーシャルリスニングツール(SNSや口コミサイト上の投稿の中から、企業のマーケティング戦略で必要となる情報を収集・分析できるツール)を用いればできますが、費用対効果を数値化するのは難しいので、その部分を「AnyTag」で解決していければと考えています。

インフルエンサーマーケティングから見る「エンタメ業界」

── エンタメ業界の今後に対して、御社として考えるところはありますか。

私たちは、社としてクリエイターがどうすればさらに上手くマネタイズできるかを常に考えています。今まではアドセンス(Webサイトやブログに広告を貼り、クリックされることで収益を獲得できる仕組み)での収益モデルが中心でしたが、グッズ販売やブランド展開、企業タイアップとのマッチング、SNSアカウントのコンサルティングなど様々なマネタイズサポートを行い、インフルエンサーが活躍できる場所を増やしていきたいです。

── インフルエンサーを起用したプロモーションにおいて(商品やサービスの)認知度や購買意欲を高めていくために、どのようなことを重要視されていますか。

案件によっても変わってきますが、積極的なクライアント様はROAS(Return On Advertising Spend=広告費用の回収率、費用対効果)まで追います。

ある案件でYouTuberを起用した際には、概要欄に計測タグを入れたリンクを貼り付け、どのくらいの購買が生まれたのかを毎月追っていました。私も驚きましたが、フォロワー数が10万人もいなかったインフルエンサーを活用した際に8,000%を超えるROASが出たのです。広告運用における平均ROASは、150〜300%程度と言われているので、どれだけの成果だったかお分かりいただけるかと思います。

施策実施時には誰を起用するかということばかり意識しがちですが、どのようなコンテンツを作って、どのプラットフォームの特性を活かしたインフルエンサーマーケティングを行うかを、包括的に見るのが望ましいでしょう。

業界的にはエンゲージメントやフォロワー数が主な指標とされることが多いですが、AnyTag」ではコンバージョンやクリックのデータも取得が可能です。

コンバージョンなどのデータを元にしたインフルエンサーマーケティングのご提案も今後増やしていきたいと考えています。

── 指標を重視する案件は増えていますか?

増加傾向ですが、まだまだ少ないという印象です。

オフラインとオンライン両方で販売チャネルを持っている会社の場合、インフルエンサーマーケティングのみの効果かどうか判定が難しいのです。しかし、前述のように売り上げにダイレクトに購買に寄与する事例もしっかり弊社案件内ではつくることができていますし、どの企業においても費用対効果がこれからは求められると考えています。

── 去年のコロナ禍でエンタメ業界は変わってきていますが、今後どのような需要が生まれるのでしょうか。

クリエイターエコノミー(クリエイターが展開するビジネスやそれを支援するツールから生まれる経済圏)を支援するビジネスモデルが伸びると思っています。

コロナ禍では家にいる時間が多くなり、個人のエンタメ消費が伸びているのではないでしょうか。チャンスを求めるクリエイターの数が増加し、個人の経済圏が広がってきています。

ここにビジネスチャンスがあるので、今取り組んでいるD2C領域でのブランド展開をはじめとして、新たなビジネスモデルをどんどん構築していきたいです。

学生時代から繋がる「今」

── 学生時代、どのような仕事に就きたいと考えていましたか?

大学の専攻が多文化共生やソーシャルインパクト(社会的影響力)だったこともあり、ソーシャルビジネスに興味があり、その分野で事業展開をする会社の面接も受けていました。人や社会の間にある溝に気づいたときに、溝を埋めるアクションが取れる人材になりたいと思っていたからです。

就活を進める中で、既にビジネスとしてなりたっている組織へ行くよりも、自分でビジネスを生み出せる人材になるにはと考えたときに、社会課題とは畑違いでしたが、若手で活躍している先輩が多く当時からアジアに拠点展開をしていた前職マイクロアドに入社しました。“広告を情報へ”というビジョンも、当時2013年頃の私にはとても新鮮でワクワクしたのを覚えています。

1年目は全く結果を残せず、2年目で結果が出始めてMVPなども取りましたが、上を見ると、マネージャーになれるのは5年後くらいかなと感じました。そのため一度会社を退職し、タイに行きました。現地の語学学校で英語の勉強をしながらフラフラしていたのですが、東南アジアの活気と目に見えて市場が成長しているのを目の当たりにし、改めてビジネスを0からつくる所を経験したいと思いました。当時、東南アジアで活躍していたマイクロアド時代の先輩だった十河(現:AnyMind Group CEO)に連絡をし、そこからご縁をいただき、今に至ります。

── 異色のキャリアをお持ちですが、働く中で一番大変なことや挫折しそうになったことは何でしょうか。

一番の挫折はタイ支社立ち上げの際、一緒にやっていた同世代の女性マネージャーが会社を退職した時に、部下も5人ほど一緒に辞めてしまったことです。理由を聞いたところ、私が数字しか見ていないためと言われました。その時、自分が一緒に働いてくれているメンバーのキャリア・人生を考えることやチームで働く楽しさを伝えることをないがしろにしていたことに気づいたのです。

日本でも組織を拡大していくためには、チームで何かをやり遂げる気持ちを大切にしていかなければならないと感じています。それが挫折からの学びです。

変化し続けるインフルエンサーマーケティング市場と必要とされる人材

── 最近、注目しているテクノロジーはありますか?

今後、リリースが検討されているYouTubeのショッパブル広告ですね。動画上で商品やサービスを紹介する際、表示されるタグをクリックするとECサイトに遷移して購入できるというものです。

また、まだ日本には導入されていませんがアメリカで使われている「Facebook pay」も注目しています。「Facebook pay」はアプリ上(Facebook、Messenger、Instagram、WhatsApp)での個人間送金や、アプリ上のサービスの決済に使われるものとなり、一度決済情報を入力したら、支払い情報を再度入力しなくても決済ができたり、ライブチャット時にリアルタイムでの支払いにも対応しているので、Instagramでのインフルエンサー施策が大きく変わると思います。

もしこれらが日本に導入されれば、よりインフルエンサーマーケティングで購買に直結する提案が求められるようになると感じています。

── 変化し続けるインフルエンサーマーケティング市場で活躍できる人材とはどのような人でしょうか。

購買数を求められる今後の流れを考えると、感覚やセンスで進んできた部分が定量化します。そのため、データ分析が好き・得意な人がより求められるようになるのではと思っています。弊社もAnyTagを起点として、データドリブンなインフルエンサーマーケティングを展開しているため、どんな商材にはどんなKOLがどんな投稿をすると効果が最大化できるのか、バズが発生した要因を定量的に突き止めたりなど、そういうことが好きな人は向いているかもしれません。

デジタルマーケティングの知識がある人も、インフルエンサーマーケティングの業界にも流れてくると思います。

── メンタルの部分ではどのようなことを求めますか?

働いていく中で、やり抜く力のある人は強いと感じますね。クライアント様への向き合い方に正解はないので、どうしたらもっと結果が良くなるかを考えながらスピード感を持って最後まで走り抜けるメンタルを持つ人は、チームの中でも特に活躍しています。

── 御社での採用時に重要視されていることを教えてください。

オーナーシップを持っている、 頭の回転が速い、コミュニケーションが気持ちがいいか、という3点を特に見ており、方針としては新卒と第二新卒の採用に注力をしています。

インフルエンサーマーケティング市場の成長が著しく、経験者のパイが限られる中で、人材の取り合いになっているように感じる背景もあり、弊社では未経験の人でも活躍できるようにオンボーディングフローを整えることにも力を入れています。

── 山田さまにとって「人材」「エンタメ」とは、それぞれ何でしょうか。

一緒の船にのる仲間ですね。AnyMindでは多角的な事業展開を進めているので、大きな船の中で実務レベルでは皆違うことをやってますし、それぞれがそれぞれのキャリアを目指しています。これまでは非常に強い個人がスピードボートに乗っていたようなチームだったように思いますが、グローバルで800人を超える大きな船にぐんと規模が広がったことで、チームを創る・チームで戦う難しさや楽しさ・重要性を日々実感しています。

毎日楽しいことばかりじゃないですけど、それぞれのキャリアを築きながら、会社のミッション・ビジョンに向けて一緒に楽しく走りぬける仲間が、私にとっての人材です。一緒に働いている仲間ととんでもないことを成し遂げた時に飲むお酒は美味しいですよね。

エンタメとは、心のビタミンです。笑 ないと生きられないものではありませんが、あると毎日がより豊かになる存在だと思っています。仕事ばかりしていると数字やタスクに追われて心が荒んでくるのですが、エンタメがあることで日常に心のゆとりができると実感しているのです。私にとって、エンタメはとても大事なものです。

 

(2021年4月15日、AnyMind Japan株式会社にて)