taskey株式会社代表・大石ロミー氏が語る e-Storyアプリと市場で求められる人材像

 

『エンタメ人☆彡』がお届けする、エンタメ業界のトッププロデューサー/経営者へのインタビュー連載。エンタメ業界へ転職を考えている方へ向けて、若手時代の苦労話から現在の業界動向まで伺っていく。第15回は、e-Storyアプリの開発・運営を行う会社を取り上げる。(編集部)

大石 ロミー(おおいし・ろみー)
作家兼経営者。熊本出身。2014年にtaskey株式会社を創業。2016〜17年 石田衣良氏の元で約半年間師事し、同年沖縄国際映画祭で募集が行われたAmazon×よしもと原作開発コンテストにてAmazonプライムドラマの原作小説として大賞を受賞する。2017年にe-Storyサービス「peep」をリリース。同年に『監禁区域レべルX』を公開しZ世代を中心に支持を集める。

縦書きの小説はいつまで読まれ続けるのだろう

──まずはじめに、御社の事業内容について教えてください。

僕たちはe-Storyアプリと呼んでいますが、スマホで読む新しい読み物として『peep(ピープ)』の開発と運営をしています。

peepのコンテンツは全て当社がオリジナルで制作しており、人気の出たコンテンツを
他社と協業というかたちで出版・漫画化・小説化しています。

── taskey社起業までの道のりについてお伺いできればと思います。元々就職されてから独立されたのですか?

大学在学中に熊本で起業をしたのですが、共同創業者と出会い東京に行くことに決めたので、taskey創業までの半年間お世話になった会社はあります。なので、就職といえるような働き方はしていませんでしたね。

taskeyの創業、そして僕が東京に出ることを決めたきっかけとしては、熊本で起業をしていた時にCAMPFIREの家入さんが主催する「スパルタキャンプ」というプログラミングの合宿に参加したことです。

──設立当初は小説投稿サイトから始められたかと思いますが、現在のe-Storyアプリ『peep』に移行した経緯について教えてください。

『taskey』はユーザーが小説を投稿するサイトでしたが、ユーザー参加型である以上、コンテンツの部分はどうしても僕たちでコントロール出来ない領域になってきます。

当社の強みは『クリエイターである僕自身が作品を作れる』部分にあると考えた結果、自分たちでコンテンツを制作し、プロデュースし、それを商品としていこうと決めました。

ただ、普通に小説として売るのでは従来の出版社さんと全く変わりません。折角なので、ITを使ってスマートフォンにしか出来ない新しいコンテンツを作ろうと考えました。

僕自身書き手として小説を書いていましたが、1クリエイターとしては縦書きの小説がいつまで読まれ続けるのだろうという疑問があったのです。

そうして情報収集をしていた時にアメリカの『HOOKED』というサービスを知りました。『HOOKED』はチャットのやり取りを物語化したようなアプリです。

これがヒントとなり、チャット型だけではなく、スマートフォンに適した小説も作ることが出来ると思い開発をしたのが『peep』のスタートでした。

──大石様の小説も当初からあったと思いますが、最初から用意されていたのですか?

『peep』をリリースする時は、100作品程度掲載しようと思っていました。ただ、当時は編集者が僕しかいなかったので、作品数が50作程しか無かったのです。それならば残り50作を自分で制作しようと思い、自分で書いて100作集めてリリースしました。

小説をより読まれやすいコンテンツに

──紙作品のデジタル化という漫画アプリも多い中、やはりe-Storyはすごく独特な世界観だと思います。読者層に違いはあると思いますか?

peepの読者層自体はいわゆるZ世代(1990年代中盤に生まれた世代)が多いです。

ただ決して若年層だけではなくて、30代の男女にも使われていますので、年齢層でいうと漫画アプリと似ているように思います。

──コンテンツとしてはホラーが多い印象を受けましたが意図したものだったのでしょうか?

初期から人気の作品はホラーやスリリングなコンテンツが多いですね。恐らくですが、携帯小説とは文脈が異なり、YouTubeなどと同じで初期は刺激的なコンテンツが集まりやすかったのだと思います。

今は多くのユーザーが定着してきていますので、ファンタジーやキャラ物といわれるような大衆受けする作品が増えてきていますね。

──現在は大石様のほかにもe-Storyのクリエイターの方が多数いらっしゃると思いますが、クリエイターをマネジメントしていく上で大変なことはありますか?

当社のクリエイターは小説家が多いのですが、通常小説の場合、連載形式というものがなく、1冊の中に起承転結を作ります。

しかし、『peep』のコンテンツは週刊漫画のような連載形式なので、小説家が元々備えていないスキルも必要となります。

例えば、各話に引きをつくっていかなければ読者がついて来てくれないのです。

連載形式の場合、海外ドラマのような展開の仕方、いわゆるクリフハンガーと言われる脚本術を小説に入れなければいけないので、そういったストーリーの展開の仕方のノウハウを伝えていくことが一番大変なのかなと思っています。

※クリフハンガー・・・劇中で盛り上がる場面、例えば主人公の絶体絶命のシーンや、新展開をみせる場面などを迎えた段階で結末を示さないまま物語を終了とすること

──今後のpeepの展望について教えていただけますか?

現在はチャットのようにライトに読める小説を展開していますが、今後は更に見やすく、読みやすいコンテンツを展開していきたいと考えています。

現在は、昔で言うところのノベルゲームのようなものを開発中です。キャラクターを軸として、時々に選択肢があり、自分が選択した内容によって本当にゲームのような感覚で読むことが出来る小説を目指しております。

また、『peep』で人気があるコンテンツに関しては次々と映像化をしていきたいと思ってますね。

最近だと「小悪魔教師♡サイコ」という作品が映像化しましたが、今後も『peep』発の映像コンテンツを次々と出していきたいです。映画化についてもとても興味があるので、ゆくゆくは自社で制作したいと思っています。

ヒットコンテンツを生み出すためには打席に立つ回数を増やすこと

──少し大きな視点へ移ります。コロナを機にエンタメ業界全体でかなり構造変化が進んでいると思いますが、大石様はどんな変化を感じましたか?

リモートによる制作が可能になったのがかなり大きな変化であると思っています。以前は出社をしたり、集まったりしないと制作の現場に受け入れられませんでした。ただコロナを機に、複数人が集まる必要があった制作物、例えばアニメや漫画などがリモートで制作することが可能であると実証された一年でした。

例えば東京に来ることは出来ないが、福岡でクオリティの高い作品を作る人も今は東京での作品制作に参加することができます。このようにリモートでの制作改革がしっかりと進んでいけば、コンテンツの量も増えますし、量が増えれば質も良くなります。そうした生産者の革命によって、消費者の求められるコンテンツが提供できるようになるのかなと思っていますね。

──変化が早いエンタメ業界ですが、今後事業を行う中でエンタメ業界にどんな影響を与えていきたいとお考えですか?

小説という分野で原作を開発し続けることで、ヒットコンテンツを生み出し、ひいては日本のエンタメ市場を盛り上げていきたいと考えています。

コンテンツがヒットするかどうかは確率論に近いものがあります。要は打席に立ち続ければ何かしら当たる可能性がある。そして、打席に立てる回数はコストが安ければ安いほど多く与えられます。

コストで言うと、アニメ>漫画 >イラスト>小説の順で安くなっていきます。つまりコンテンツを生み出す上で一番安いのは小説なのです。

例えば漫画の場合、1話30万円程度かかりますが、小説の場合、1話数千円という価格で制作が可能です。なので打席に立てる回数が多い小説という分野においてコンテンツを生み出し続けたいと考えています。

ゆくゆくはアニメ化や漫画化といった二次展開をする際に、マーケティングや内部のデータを駆使してそのコンテンツのヒットの確度をデータで分析できる体制も整えたいなと考えています。

「好きを増やせる人」「好きを突き詰められる人」が求められる

──人材部分についてもお聞かせください。今後エンタメコンテンツ市場では、どのような人が求められると思われますか?

コンテンツやエンタメに限ると、その人がどんなスキルを持っているかという定量的な部分ではかることは難しいと考えています。

そのような定量的な部分よりも定性的な部分が大事かなと。つまり「好きを突き詰められる人」や「興味関心の幅広さ」「好きを増やせる人」ではないでしょうか。

好きを増やせるというのは。例えば当社でいうと、自分が担当することになった作家さんをとにかく好きになれるとかですね。目の前に発生する仕事を自分からすぐ好きになれる人とも言い換えられると思います。

好きを突き詰めるというのは、「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが好きになれば熱中して仕事が出来るんですよね。好きじゃない人が努力してもそこに勝つことは難しいのかなと思ってしまいます。

──御社で採用される方は、まずはエンタメが好きという方ですか?

まずそこが基本ですね。それがないとなぜ当社に来たのだろうとなってしまうので。

──直近で欲しい人材とはどういった方ですか?

スキルの部分でいうと、0から何かコンテンツを生み出してそれをビジネスとして成立させた経験がある人が欲しいですね。出版社でいえば、担当作家がいて、漫画なり小説なり1冊の形にして、商品として販売した実績があるというような。勿論、それが他のコンテンツでも構いません。

メンタルの部分でいうと、当社はスタートアップでまだ30名未満の会社なので、向上心と野心があることは前提です。ただ、一緒に働く仲間を大切にできる人じゃないと、この規模では厳しいかなとは思います。

──最後に二点お聞きします。大石様にとって一緒に働くメンバーは、例えるとどういう存在でしょうか?

例えるならアイドルです。

メンバーそれぞれ個人の目標があって、個々の才能を活かして、その目標を達成するために当社がある。『taskey』というアイドルグループを大きくすればするほど自分に返ってきますから、『taskey』というグループに個々の才能を活かして最大貢献しているという意味で、アイドルグループに近いのかなと思いました。

──では、大石様にとってエンタメとは。

エンタメとは、僕は「人間にとって不必要なもの」だと思っています。
文明は人間にとって生きるために必要なものだと思いますが、文化は不必要だと僕は思っています。

それはエンタメも文化の1つですので、本来は不必要ではありますが人間が人間らしくあるために必要なもの。
すなわち「人間にしかできない不必要」だと思っています。

 

(2021年4月12日、taskey株式会社にて)