Activ8株式会社代表・大坂 武史氏が語るバーチャルタレント事業から見えてきた、バーチャルトランスフォーメーションが加速する未来

 

『エンタメ人☆彡』がお届けする、エンタメ業界のトッププロデューサー/経営者へのインタビュー連載。エンタメ業界へ転職を考えている方へ向けて、若手時代の苦労話から現在の業界動向まで伺っていく。第14回は、バーチャルタレント事業を行う会社を取り上げる。(編集部)

大坂 武史(おおさか・たけし)
Activ8株式会社・CEO

1986年日本生まれ。webメディアやコンテンツを開発するベンチャーにて事業開発、経営企画を経験。2015年、グローバルCGスタジオ日本法人の責任者に就任。2016年9月、Activ8株式会社を創業。「生きる世界の選択肢を増やす」をvisionに掲げ、バーチャルタレントのプロデュース、xRコンテンツ、YouTubeやTiktok等に最適化されたコンテンツを展開し、日本からグローバルで勝つ企業を目指す。

世界で戦える日本のアニメコンテンツ

──まず御社の事業内容について簡単に教えていただけますでしょうか?

テクノロジーを活用してタレントをプロデュースし、そのタレントのマネジメントを行っています。この事業が当社の主力事業でして、バーチャルタレントをグローバルに広めた会社でもあります。代表的なタレントとして、世界中に1,000万人を超えるファンを持つキズナアイがいます。

また、昨年から私たちの培ってきたノウハウや技術、総合力を投じて「バーチャルなエンタテインメントを作りたい」「バーチャルYouTuber(以下、VTuber)を作りたい」といったニーズに応える「Cre8ive Studio」というサービスを提供しています。

──キズナアイさんはVTuberのパイオニアとも言われていますよね。未知の領域だったバーチャルタレント事業を立ち上げた経緯についてお聞かせいただけますか?

日本のアニメコンテンツに非常に可能性を感じたのがきっかけでした。
我々が思っている以上に、日本のアニメコンテンツは海外の方々から
高い評価を受けています。

私は以前外資系のCG制作会社で働いていましたが、
社内外問わず海外の方々は日本のアニメを好きを超えて非常に
リスペクトしてくれていました。

また、私が非常にリスペクトしているシリコンバレーや上海、サンフランシスコなどの日本より遥かに技術が進んでいる地域の方々も未だに日本のアニメコンテンツをリスペストしてくれています。

グローバルにビジネスを展開していきたかった私にとって、この事実は非常に可能性を感じましたし、日本のアニメで勝負するしかないと考えるようになりました。

──起業以前から世界を視野にいれていたのですね。

私は起業する上で、世界で戦える会社を作らなければいけないと考えていました。平成不況の真っ只中に生まれ、リーマンショック、東日本大震災を経験する中で、日本国内だけで戦うことについて疑問を持つようになっていたのです。

また、グローバル化の波が押し寄せて来る中で、
今後世界で戦える会社で無ければ生き残っていけないという危機感もありました。

──そこからバーチャルタレントにはどう繋がったのでしょうか?

当時のアニメ業界は素晴らしいコンテンツを作っていましたが、時代に合わせた表現という点で改善の余地があり、テクノロジーを介在させることによってもっとより良いコンテンツに出来ると感じていました。

具体的には、2014年10月に『好きなことで、生きていく』というYouTubeのCMが流れ始めて2015年には「時代はYouTubeだ!」となっていた時のことです。

そんな時でも、日本のアニメは変わらずテレビでばかり放送されていました。
稀にYouTubeでもアニメコンテンツを流すことはありましたが、YouTubeならではのコンテンツとして落とし込むことが出来ておらず、結果として再生数も全然伸びていませんでした。この部分に改善の余地があると感じていたのです。

そこで日本のアニメをYouTubeにフィットするように落とし込んだ結果がバーチャルYouTuber(以下、VTuber)でした。

テクノロジーを活用し、話題になっていたプラットフォーム、つまりYouTubeに日本のアニメをフィットするように落とし込んだ結果、「バーチャルタレントがYouTube配信を行う」というフォーマットができ、そして、そこから生まれたのがVTuberだったのです。

そうしてYouTubeでの海外の二次元やサブカルチャー好きのニーズを一気に拾えたことがVTuberのヒットの要因であると考えています。

──初期は海外のニーズを拾い一気に広がっていったのですね。プロデュース当時から海外でのヒットは想定していたのでしょうか?

プロデュース当時から海外はかなり意識はしていましたね。ただ、あそこまでの勢いで伸びるとは思っていませんでした。当時海外では日本のアニメはまだ見にくい状況だったため、二次元コンテンツが枯渇していました。そんな時に「アニメコンテンツを毎日更新してくれる」と喜ばれた側面もあったと思います。

しかし、海外にヒットした最大の要因は
「アニメキャラクターに生命が宿ってついに自ら発信し始めた!!」というフォーマット自体の新しさだったのではないかと考えています。そのフォーマットの新しさが話題になり、タイから始まって、韓国からアメリカまで世界中に一気に広がっていきました。

2017年まではファンの95%以上が海外の方々で、2018年頃にようやく日本でも「これは面白いコンテンツだ」と認められるようになってきました。現在はVTuberというコンテンツ自体も日本での認知は広がっていると思います。

追求していた技術やノウハウが世の中に求められるように

──昨年から立ち上がった「Cre8ive Studio」についてお聞かせいただけますか?

そもそもこのサービスを立ち上げた経緯としては、私たちが当たり前に追求していたバーチャルコンテンツや、バーチャルライブが世の中に求められていることに気が付いたからでした。

私たちは今まで、自社のバーチャルタレントをマネジメントする上で色々な技術やノウハウを培ってきました。

去年新型コロナウイルス感染症が拡大し、ライフスタイルは大きく変化しました。事実として、音楽ライブやイベントなどの人が集まるビジネスが出来なくなりました。

その結果、元々自社のために開発していたバーチャルライブ等が様々なクライアントから求められるようになったのです。

これまで培ってきた技術が貴重だということがわかりましたし、私たちもバーチャル上での様々なサービスの使用例や実績が増えることはメリットでもあります。

なので、思い切って今まで培ってきたノウハウや技術、総合力を投じてバーチャルコンテンツの制作サービスを提供することを決めました。

──確かにライブやイベント業界はコロナで大打撃を受けたと思います。
     では、エンタメ業界のクライアントが多いのでしょうか?

エンタメ業界のクライアントでは、確かにバーチャルライブやアーティストさんが「バーチャルアバターを制作してほしい」等の需要はありますが、意外にエンタメ業界外のクライアントからのご要望が多かったです。

企業のブランディングのためにバーチャルタレントを使いたい。自社のモデルにバーチャルヒューマンを起用したい。VR上でのイベントを開催したい。等様々なニーズがあります。

特に3Dモデルの制作や、モーションを作成する時には「Activ8さんでお願いしたい」と指名を受けることは多いですね。

設備が充実したスタジオも兼ね備えているので、一貫してニーズに答えることができるのが当社の強みであると考えています。

現在様々な業界でDXが必要と言われていますが、今後はバーチャルトランスフォーメーションも必要になってくると思います。

※DX・・・デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術を活用して、全く新しい便利なライフスタイルやビジネスモデルを実現すること

──バーチャル化に関しては実例もまだ少ないため、クライアントの要望に応えるだけでなく、コンサルティングも必要になってくるのではないでしょうか?

仰る通りです。『Cre8ive Studio』ではバーチャルタレントの制作から運用までワンストップでサービスを提供してきましたが、現在はバーチャルタレントの企画部分から参加することが多いです。

クライアントに対し、そもそものビジネスモデルから始まり、マネタイズの仕組み、マネジメントの大変さなども詳細に説明しています。

例えば「バーチャルタレントを制作したいので、3Dモデルを作ってください」と言われた場合にただ3Dモデルを制作するわけではないです。3Dモデルを作った後にどうやって撮影をするのか、その後の運用に纏わる予算や契約はどうなっているのかをヒアリングします。

そうしてヒアリングを行った結果、クライアントの使用目的に応じて私たちからソリューションを提案するようなコンサルティングも行っていますね。

デジタル化してるからこそ行える表現

──『Cre8ive Studio』の今後の展開についてお聞かせいただけますか?

今までは3DモデルやVRコンテンツ、360°動画からバーチャルタレントの制作など様々なニーズに対して広くお答えしておりました。

しかし、今後は得意領域を一つ尖らせていきたいと考えています。それは『バーチャルライブ』です。私たちがバーチャルライブと呼ぶのは、いわゆる無観客ライブと呼ばれているものですね。

勿論集まれたらベストですが、集まらなくても楽しいエンターテイメントをまずはファンの皆様、そしてアーティストさん、クライアントの皆さんにも提供していきたいと考えています。

──集まらなくても楽しいエンターテインメントですか。コロナを機に特に注目されている部分になっていると思います。

そうですね。そもそもですが、リアルでライブに参加する場合と、MV(ミュージックビデオ)を見ている時の違いって二つしかないと考えています。

一つは「会場の熱気を味わえるかどうか」
もう一つは「自分と同じ空間にアーティストが存在していると信じるかどうか」です。

人気アーティストのライブで例えると、後方の席に居た場合って、正直ディスプレイを見ることになりますよね。それでもお金を払って、ライブ会場に行く理由は、その会場でしかない熱気を味わいたいからだと思うんです。であればその空気感をデジタルの空間で伝えられればいいんじゃないかと考えています。

例えば、バーチャルライブでは、リアルの空気感を生み出すために「いいね」を押すとそれが歓声になるようなシステムを作っているんです。たとえバーチャルの世界観でも、自分以外の人も同時に歓声を上げていれば、周りと繋がっている感覚を得ることができると思いませんか?

同時接続数十万人とか、ただ数字だけでみるのではなく、もっと感覚的に、それこそ五感を使って会場の熱気やアーティストの存在を味わう方法があるだろうと思ってます。その辺りを今後追求していきたいです。

あとはギフティングですね。いわゆる投げ銭というものですが、あれってただアーティストに課金しているわけではなく観客の熱気を盛り上げる効果もあると思うんです。

例えば、少し極端な話ですが、自分が参加しているライブで、演者に対する投げ銭の1万円が飛び交っていたとしたら、見ている人の気持ちも昂っていくかと思います。

これらのようなバーチャルライブにおける表現技法に関しては
追求していきたいと考えています。

コロナを機にバーチャルライブが注目され始め、現在バーチャルライブは体験価値が非常に高いことが今理解され始めています。

デジタル化しているからこそ出来る表現ってあるんですよね。世界に先駆けたフォーマットで制作をしている自負があるので、ブラッシュアップしてその表現に注力していきたいと考えています。

同じ場所にいなくても繋がっているように見える体験価値をユーザーには届けたいですし、ライブ・エンタメ業界にとっては、これまでのビジネスフォーマットが手を出せていなかった部分にもソリューションを展開したいと思っています。

戦場を一緒に駆け抜けてくれる仲間

──では最後にお聞きします。大坂様にとって共に働くメンバーはどんな存在ですか?

「戦友」としか言いようがないですね。一番最初にキズナアイをプロデュースした時もそうでしたが、時代の半歩先を行くビジネスを行う場合、常識と戦うことが必要になります。そうすると、とにかく否定をされまくるんですよ(笑)。

ものすごい遠い人からも言われましたが、一番近い人からも、ある時は家族からも「やめよう」と強く言われましたね。そして事業がうまく回り始めた頃に「実は私も成功すると思っていたんだ」と手のひら返しを喰らうんです。そんなものなんですよ。

ただ、それまで全く見向きもされなかった。やめた方がいい。危険だ。と、とにかく否定しかされないんです。

そんな中で社員は一緒に戦ってくれました。先もあるのかわからない会社に入り、家族から理解されないこともあります。私が知らないような辛い経験も社員はいっぱいしてきたと思います。それでも乗り越えてついてきてくれています。

時代の半歩先を行くビジネスを行う場合、もはやそこは戦場なんです。その戦場を一緒に駆け抜けてくれる仲間、これはもう戦友としか表現しようがありませんし、本当に付いてきてくれている戦友には感謝しかありません。

 

(2021年4月5日、Activ8株式会社にて)